現在は、資本金1円でも株式会社が設立できます。また、一時期ありました確認会社のように、5年以内に増資しないといけないという規定もありません。
つまり、「会社を設立する」ということだけで考えると、いくらでもいいということになります。
しかしながら、実務面からいいますと、やはりある程度の資本金を積んでおいておいた方がいいでしょう。
【1】資本金の額はどれくらいが妥当か
以下の事項を参考に、資本金の額の設定下さい。
会社としての信用性を考える
会社としての信用性の側面からは、やはり大きいに越したことはありません。もちろん、会社の信用性は資本金の額で分かるものではありませんが、資本金の額は登記事項であり登記事項証明書に記載されていますので、第三者がその会社を調査する際に、容易にチェックできます。資本金10万円の会社と資本金1,000万円の会社では、やはり資本金額が大きいほうが信用される傾向にあります。
キャッシュフローを考える
業種によっても異なりますが、小売業や製造業でしたら通常、まず仕入れのために資金が必要です。材料が加工されたり、商品が販売されて、何ヶ月か後に初めて売上げとして会社にお金が入ってきます。つまり何ヶ月かの間、収入なしに出て行くばかりの時期が発生するということになります。当然、会社にとってお金は血液ですから、資金がショートしたとたんに事業が立ち行かなくなります。
当面の資金をどこから調達するのか、少なくとも2~3ヶ月は収入がなくても、資金が回せる余裕が欲しいところです。すべてを資本金で賄う必要はありませんが、スタート時にある資金として有効活用するべきと考えます。
必要な許認可を考える
建設業や金融商品取引業、一般労働者派遣業(人材派遣業)等、許認可の中には資本金の額が要件である場合があります。設立後増資して許認可を取得するのも可能ですが、増資には登録免許税等の費用がかかりますので、よく検討した上で、資本金額を決定しましょう。
【2】現物出資について
会社設立時に発起人は出資をしますが、現金だけでなくモノによる出資も可能です(会社法34条1項)。
資本金を1,000万円としたいのであれば、必ずしも現金で1,000万円を用意する必要はなく、現金で500万円とモノで500万円を出資することもできます。
しかし、現物出資は注意点が多く、また設立時に必要な書類も増えてきます。設立後に取締役等が不用意な責任を負わない為にも、原則として、金銭による出資の設立を考え、補足的に現物出資という方法もあるくらいに思っておきましょう。
出資できるモノについて
現物出資できるのは、譲渡可能なもので、かつ、資産計上が可能なものです。不動産等について、登記等の第三者対抗要件の変更を行うのは設立後で構いません。
主な具体例
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動産:商品、原材料、自動車、パソコン、周辺機器など
- 不動産:土地、建物、賃借権など
- 有価証券:国債、地方債、株券など
- 債権:売掛金、貸金債権など
- 鉱業権、漁業権など
- 特許権、実用新案権、商標権等の知的財産権、営業の全部または一部や営業上のノウハウなど
現物出資する金額について
出資する財産を不当に高く評価すると、会社の財産が害されてしまいます。そこで、現物出資に当たっては、その現物の評価が妥当か検査役の調査が必要とされています。
ただし、現物出資の額が一定額以下の場合、検査役の調査の不要となります。
検査役の調査が不要な場合
- 現物出資の額が総額500万円を超えない場合
- 市場価格のある有価証券(金融商品取引法第2条第1項)で、所定の算定方法による価格を超えない場合
- 弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士または税理士法人の証明を受けた場合(不動産の場合は不動産鑑定士の鑑定証明も必要)
検査役の調査のためには、裁判所に選任の申立てを行わないといけないですし、報酬も支払わなくてはいけない等手続きが煩雑になります。現物出資をするならば、検査役の調査が不要な範囲で行うようにするとよいでしょう。
現物出資について、定款に記載する事項
会社を設立する際には事前に定款を作成しますが、現物出資をする場合は次の事項を定款に記載しなければなりません(法28条1号)。
- その出資をする者の氏名(または名称)
- 当該財産
- その財産の価額
- 割り当てる株式数