株式会社の取締役等の役員の構成や資格、任期については、会社法で定められています。
【1】役員の構成について
株式会社の役員構成は、株式の譲渡を制限するかどうかで大きく変わってきます。
株式譲渡制限会社とは、すべての株式の譲渡につき取締役または株主総会の承認を要する旨の定めを定款においている会社のことをいいます。本来、株式会社の株式は譲渡が自由であるものですが、中小規模の会社の場合、株主の会社経営に対する影響力は大きいので、株式譲渡を制限することによって好ましくない株主を排除しようとするものです。
主な役員構成のパターンは次の表のとおりです。
表の1~6は株式譲渡制限会社のみ可能なパターンです。
(主に大企業の場合に検討する委員会についてはここでは省略します。)
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株主総会 |
取締役 |
取締
役会 |
監査役 |
会計参与 |
会計監査人 |
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株主総会は必ず設置。 |
取締役は必ず設置。株式譲渡制限会社では1名以上。 |
取締役会を置く場合は、取締役は3名以上必要。 |
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任意で設置。 会計参与は、税理士か公認会計士の資格者。 |
大会社以外は任意で設置。会計監査人は、監査法人か公認会計士。 |
もっともシンプルな形 |
株式譲渡制限会社 |
1 |
○ |
○ |
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適正を担保するために
監査役は設置したい |
2 |
○ |
○ |
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○ |
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会計の信用性を高める |
3 |
○ |
○ |
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○ |
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監査役も会計参与も設置 |
4 |
○ |
○ |
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○ |
○ |
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上場目指したい |
5 |
○ |
○ |
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○ |
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○ |
取締役会を設けて
定期的に会議をしたい |
6 |
○ |
○ |
○ |
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○ |
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会社法施行前の機関構成 |
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7 |
○ |
○ |
○ |
○ |
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会計の信用性をプラス |
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8 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
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9 |
○ |
○ |
○ |
○ |
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○ |
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10 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
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【2】取締役の資格
次のような人は取締役になれないことが規定されています。(会社法第331条第1項の第1号から第4号)
- 法人。
- 事理弁識能力が常にないような人や、著しく不十分という裁判所の審判を受けている者。また、外国の法律で同様に取り扱われる者。
- 刑に処せられ、その執行を終えるか執行を受けることがなくなった日から2年経っていない者。
- 3以外の法令違反で刑が禁錮以上の刑だったとき(執行猶予中を除く)は、刑の執行を終えるか、その執行を受けることがなくなるまで。
未成年者は取締役になることができます。
中小企業で委員会を設置しているところは少ないと思いますが、第3項で「委員会設置会社の取締役は、当該委員会設置会社の支配人その他の使用人を兼ねることができない」とされていますので、ご注意下さい。
(参考)会社法 第331条 第1項
次に掲げる者は、取締役となることができない。
【第1号】
法人
【第2号】
成年被後見人もしくは被保佐人または外国の法令上これらと同様に取り扱われている者
【第3号】
この法律もしくは中間法人法(平成13年法律第49号)の規定に違反し、または証券取引法第197条第1項第1号から第4号までもしくは第7号もしくは第2項、第198条第1号から第10号まで、第18号もしくは第19号、第199条、第200条第1号から第12号まで、第21号もしくは第22号、第203条第3項もしくは第205条第1号から第6号まで、第15号もしくは第16号の罪、民事再生法(平成11年法律第225号)第255条、第256条、第258条から第260条までもしくは第262条の罪、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律(平成12年法律第129号)第65条、第66条、第68条もしくは第69条の罪、会社更生法(平成14年法律第154号)第266条、第267条、第269条から第271条までもしくは第273条の罪もしくは破産法(平成16年法律第75号)第265条、第266条、第268条から第272条までもしくは第274条の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、またはその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
【第4号】
前号に規定する法律の規定以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)
【3】取締役の任期
原則、取締役の任期は2年です(会社法第332条)。ただし、公開でない株式会社の場合、取締役の任期を10年まで伸ばすことができます。
ほとんどの小規模会社(オーナー兼社長のような1人会社や、家族経営のような会社など)は譲渡制限会社で公開でないことが多いので、取締役の任期を2年よりも長く延長し、任期10年としても問題ないでしょう。
しかし、友達同士や先輩後輩といった間柄で役員を構成をしている場合は、少し注意が必要です。長くても4~5年くらいにしておいた方がいいでしょう。というのも、何年か取締役として経営に携わっていると、取締役間で少しずつ方針にズレが生じてくることがあります。のちのち余計なトラブルを避ける為にも、役員の見直しの機会として任期を短めに設定しておくことをお勧めします。
取締役の任期は、定款記載事項です。定款の変更は株主総会の決議事項です(会社法第466条)。役員に変更があるときには株主総会を開きますので、任期も忘れず見直しましょう。